ストーン・リバー

安倍政権の歴史的大罪

原発が集中立地する福井県でついに再稼働が行われた。福島の事故から5年になろうとしているが、いまだ「収束」の見通しはたっていない。福島を置き去りにし、事故をなかったものにし、再稼働に突き進む安倍政権と電力会社、そして、それに追随する自治体や議会。リスクを隠ぺいし、安全性を強調する彼らの姿は、これまで見た風景と重なる。「安全神話」と「原子力村」の復活と言わざるをえない。

●「福井新聞」（1月30日）朝刊より

議員も辞職すべき

大臣辞任は当たり前だ。週刊誌が報じて1週間。この間、甘利は証拠を隠滅し、関係者の口をふさぎ、つじつま合わせをしてきたはずだ。だから、用意してきた「原稿」を落ち着いて読み上げた。しかし、悪知恵をこらしても「事実」を変えることも、なかったことにすることもできなかった。だから、これ以上傷を深くしないために、辞任に踏み切った。

「引き続きやってもらう」と表向きは強気を通してした安倍首相も、その辺は織り込み済みで、すぐさま後任に石原伸晃をあてると発表した。すでに「シナリオ」がとっくにできていたのだ。甘利が「言い訳」をつくる時間をつくってやったのだろう。

その証拠に25日の夜、安倍首相は石原と南麻布のイタリア料理店で会食している。メシを食っただけだなんて誰も思わない。話は決まっていたのだ。

告発した人の罠にはめられたなどと甘利を「被害者」にすりかえたり、秘書の不始末の責任をとった甘利をほめあげたりする者もいそうだが、トンデモナイことだ。甘利はお金をふところに入れたのだ。即刻、議員辞職すべきだ。
そして、かばい続けた安倍も菅もその非を認め、謝罪し、責任をとるべきだ。


甘利大臣が辞任表明　建設会社から100万受け取る
[2016年1月28日19時38分]

　甘利明経済再生担当相（衆院神奈川１３区）は２８日、内閣府で記者会見し週刊誌が報じた金銭授受疑惑をめぐり建設会社側から大臣室と地元事務所で現金計１００万円を受け取ったと認めた上で、閣僚を辞任すると表明した。現金は政治資金として秘書に適切に処理するよう指示したと説明。だが国政への影響などを考慮し辞任を決めたと述べた。政権運営に打撃を与えるのは必至だ。安倍晋三首相は後任に石原伸晃元環境相を起用した。野党は首相の任命責任を追及する。

　閣僚辞任は昨年２月の西川公也農相（当時）以来で、同年１０月発足の第３次安倍改造内閣で初。首相は２７日、甘利氏について当面、続投させる考えを示していた。

　甘利氏は会見で、疑惑報道により国会審議に支障を来しかねないとの認識を示し「安倍政権の足を引っ張るのは耐え難い」と強調。その上で「国会議員としての秘書の監督責任、閣僚としての責務、政治家としての矜持（きょうじ）に鑑み、閣僚としての職を辞することを決断した」と述べた。

　２０１３年に秘書が建設会社側から５００万円を受け取り、このうち３００万円は秘書が自ら使ったと説明した。

　閣僚として、経済再生のほか、大筋合意した環太平洋連携協定（ＴＰＰ）交渉を担った。衆院当選１１回で１９９８年に小渕内閣の労相で初入閣。第１次安倍内閣で経済産業相、第２次、第３次内閣で経済再生担当相に就き、安倍首相の側近中の側近に当たる。

　週刊文春は、千葉県の建設会社側から都市再生機構（ＵＲ）とのトラブル解決の謝礼などとして甘利氏が現金計１００万円を直接受け取ったと報道。秘書を含め甘利氏側への現金や接待などは証拠が残っているものだけで１２００万円とした。（共同）

“ゲスの極み”って誰の事だ？

甘利疑惑を打ち消すような記事が大手紙に堂々と載っている。「犯罪者」として糾弾されてしかるべき人物が、いつのまにか「罠にはめられた善良な人物」に変わってきている。ここまで腐ってきているとは思わなかった。週刊誌が報じて明日（28日）で1週間。この間、甘利大臣は証拠を隠滅し、関係者の口をふさぎ、つじつま合わせをしてきたはずだ。だから、明日の説明は用意周到ぶりが発揮されるだろう。
しかし、「事実」を変えることはできないし、消すこともできない。お金をもらったことをどう言い繕うのか、見ものでもある。
「読売」が火消しに走り、問題の矛先を変えるために頑張るのは「理解」できるが、「毎日」までが品性のない記事で同じ調べを奏でるとは意外だ。“ゲスの極み”というのはこうしたメディアのことを言うのではなかろうか。

●「毎日新聞」（1月25日）朝刊
●「読売新聞」（1月27日）朝刊

「解放新聞」第2748号（2016年1月25日）より

狭山再審勝利のための三要素＝論理と運動と世論

年が改まるといっても、12月31日と1月1日は切れ目なく続いているから、何も変わりはしないが、それでもやはり「今年こそ！」との思いは湧いてくる。問題は多くの人が共有しているその思いを、いかに再審実現へとつないでいくのかということにある。もちろん、毎日毎日、四六時中、「狭山」のことを考えているわけでもない。何らかの節目や関係する出来事があった時に、状況を見遣り、先行きに想いを馳せるくらいだ。

で、このところぼんやりと浮かんできたことは、「論理と運動と世論」ということで、名付けて「狭山再審勝利のための三要素」と言う。
「論理」とは、確定判決の根拠（自白、客観的証拠､秘密の暴露）とその論拠を崩す「論理」のことだ。虚構の判決と言われる代物で、砂上の楼閣にも等しく、すでに多くの論点については、論破してきているが、いまだにそこにあり続けている。だから、誰もが理解できる簡便な言い回しで、その誤りと矛盾を明解にすることが必要だ。これを弁護団にはぜひやってもらいたいと思う。そして、さらには現在の取り組みの到達点を明らかにし、残る論点は何なのか、そのために証拠は何が必要なのかを提示してほしい。そこに向かって、内外の力を集めることが大事だと思うからだ。そのためには、弁護団は奥に引っ込んでいるのではなく、もっともっと露出すべきだ。一番正確に状況を把握している弁護団が、ほとんど何も発しないのは異常だと言える。弁護団の積極的なアクションを求めたい。

「運動」とは、言うまでもなく、組織的および市民的運動のことだ。狭山闘争の経過を見れば、かつてとは「様変わり」をしてきたことは明らかで、部落解放同盟と労働組合を中心としたものから、学者・文化人や自立した市民による運動が広がってきている。しかし、よくよく内実を見れば、安心・楽観はできないことが見て取れる。例えば5月と10月に行われている市民集会は、名と実とが乖離したものになっている。名実ともに「市民集会」らしいものになるよう、一層の創意工夫が必要だろう。こうした運動で怖いのは、同じことを定期便のように繰り返し、マンネリに陥ることだ。現状の固定ではなく、変革を求めているのだから、それにふさわしいありようを示さねばならない。難しいことだが、チャレンジ精神を発揮し、新たなステージを創るべきだ。

「世論」とは、狭山事件についての市民的関心・注目の獲得だ。これを現実のものとするためには、多くの人が指摘している通り、やはり根本的に情報発信力を強めることが不可欠だ。仮に、今のままであるとするなら、おそらく厳しい結果になることは避けられないだろうと思う。世論喚起については大きく、決定的に立ち遅れていると言わざるを得ない。おそらく担当者も「事務局」もそう思っているはずだ。ネックになっているのは何なのかは知らないが、努力・克服の跡が見受けられないのが残念だ。発信すべき情報はあるはずだ。そのツールも持っている。あとはそれを載せればいいはずだ。ネットを最大限、有効に活用すべきことはもちろん、節目には記者会見をしてマスコミに情報を流すべきだ。全国の支援者にもきちんと情報が届くようにすべきだ。これらをやりきらなくては、扉の前に立つこともできないだろう。情報戦の立ち遅れを挽回し、結果を出すことに3ゲン（人間・財源・権限）を集中的に投下してほしい。

これら「三要素」は、再審実現への必要条件であって、十分条件ではない。これらが満たされて初めて、裁判所と検察と対等に闘うことが可能になるに過ぎない。十分条件は何かと言えば、三要素が有機的・効率的に絡み、総合力の発揮に至ることだ。現状のように、それぞれが克服すべき課題を抱え、個々バラバラなままでは太刀打ちはできない。一刻も早く弱点を克服する手立てを講じ、「論理と運動と世論」の飛躍的強化を実現しなければと思う。

●年末に送った「要請書」の「受け取り」が東京高裁から6日に届いた。日付印を押しただけの簡単なものだが、なしのつぶての東京高検よりはましか。

甘利は即刻辞任・辞職せよ！

●「読売新聞」（1月24日）より
うん？こいつら、一体、何が言いたいんだ？ひょっとして、甘利大臣を「無罪」にしようとしてるんではないだろうな。50万円のお金を受け取ったかどうか、記憶がないはずがない。時間稼ぎをして、何とか逃れる術を探しているに違いない。
「わな」であたっとしても、そんなものにはめられる方が悪いのだ。現金を受け取っておいて「わな」も何もあったものではない。高村がまたしてもとぼけた寝言を振りまいて、もみ消しの先頭に立っている。トンデモナイことを、さも正論のように吐く、こいつの胡散臭さは天下一品だ。
小渕優子は逃げたままだし、高木は居直っているから、3匹目のドジョウにしたいのかもしれない。現職大臣の大スキャンダルにしては、マスコミは静かしぎやしないか？
さては、この「密談」が効いてるかな？
●「読売新聞」（1月22日）より

大寒波襲来

快晴だけど、激さむ。
バケツの水も凍ってる。
最高気温が2度！

「袴田巌 夢の間の世の中」試写会

1月22日、「袴田巌　夢の間の世の中」の試写会が大阪で（ビジュアルアーツ専門学校）あった。すでに寄せられている感想のとおりのいい映画だった。

言葉を発しなくても、人を惹きつけ、圧倒的な存在感をみせる袴田巌さん。その「巨人」をあるがままに受け入れ、穏やかに見守る姉の秀子さん。ところどころに挟まれている袴田さんの獄中日記は、死刑囚であることの意味を問いかけ、映画に緊張感をもたらし、バックに流れる音楽は絶妙のハーモニーを奏でている。そして、カメラはどこまでも静かに、二人の日々のくらしを丹念に追う。

自分の世界の外の出来事に動じることなく、その世界にまさに淡々として生きている袴田さん。時に見せる感情の一コマにホッとさせられると同時に、奪われてきたものの大きさと深さを改めて知る思いがする。

いわゆる「権力」を持つ者は、罪なき者を犯罪者にし、死刑を宣告して抹殺することもできる。それが冤罪であるが、一旦確定した判決を覆すことの困難性は幾多の事件が示している。幸いにして戻ってくることができた袴田さんも、まだ「仮の世間」にあり、「死刑囚」の軛からは解放されてはいない。それどころか、元の世界に引き戻そうとする権力側の悪巧みが続いている。

その意味では、裁判官や検察官にこそ観てもらいたい映画だ。

狭山第3次再審をかちとるために

投稿しよう！

第３次再審で勝つために、何ができるか、何をしなければならいのかとの問題意識は持ち続けています。手っ取り早くでききることの一つとして、新聞・雑誌への投稿があり、この間、何度か試みてきました。しかし、筆力が及ばず、なかなか採用には行き着きませんでした。それが、ようやく実り、1月15日の「週刊金曜日」の論争欄に掲載されました。本当に久しぶりのことで、とても嬉しかったです。

一般紙にも幾度か挑戦してきましたが、こちらは敷居が高く、届いていません。単純に考えると、例えば、同じ新聞に100人から「狭山事件」の投書があったとしたら、担当者の心は動かないものでしょうか？もちろん、中身が問題でしょうが、量も大事ではないかと思うのです。ですから、ぜひ新聞等に投稿をしてほしいと思います。一般紙の投書欄は、よく読まれているし、掲載されれば何百万人もの人に知らせることができます。ぜひ、チャレンジを！

2016年の部落解放運動

何となく　今年はよい事あるごとし　元日の朝晴れて風無し

石川啄木（1886～1912年）の歌です。今年の正月は異常なほどあったかく、こんな気持ちになったと思いますが、この歌をよんだ1911年（明治44）の啄木は、病（肺結核）が進行し、朝日新聞社への出社も途絶えがちとなっていました。だから、新しい年を迎えて、辛く苦しい歳月を振り払いたい気持ちを、「今年はいいことある」にこめたのです。

1911年は日本が戦争国家へと突き進んだ転換期の年でもありました。前年に「大逆事件」がおこり、26人の被告のうち幸徳秋水ら24人が1月18日に死刑判決を受け、12人が一週間の後に刑が執行され、暗黒の時代の始まりとなりました。啄木の事件への興味は尋常ではなく、膨大な公判記録を読み込み、政府によるでっち上げだったと確信し、2010年8月に「時代閉塞の現状」を、2011年5月には幸徳の意見書を写した「A Letter from Prison」を、6月には長編詩「はてしなき議論の後」を書きました。

まさにこの時、啄木は病に蝕まれ、貧窮を極める生活にあって、キバをむき出して襲いかかって来ている強権に命を削りながら立ち向かっていたのです。そして、時代は今、啄木が生きた時代と似てきています。憲法解釈を閣議決定で変更し、「戦争法」を強行成立させ、異論を唱える者を引きずりおろし、民意を無視して原発再稼働や辺野古新基地建設をごり押しして突き進む安倍政権の姿と重なります。そこにあるのは、強者の驕りであり、人に対する冷酷さです。それは、強い者・富める者にかたよった政策を実行する一方で、弱い者・貧しい者にはバラマキ策で飴をしゃぶらせるという、あからさまな差別政策となって表れています。「奢れる者久しからず」と言いますが、どんなに権勢を誇っていても、必ず没落の時は訪れます。それをわきまえていれば、自らを振り返ることもできますが、安倍首相の視点はそこにはないようです。

90年前の日記

裏口の道路が低いので雨が降るたびごとに水がたまる。いつまでもペチャペチャで困る。今朝、例の通り吉太郎ところへ行くと春枝さんが風呂の灰を「こみ」に二三ばいくれと云った。それが動機となって車で五六回もはこんだ。元来弱体な僕はハァハァと云った。そしてイキが切れそうになった。それがために十二時になってしまった、仕事も出来そうにない、いつも乍ら一度活動を見たいと思ってゐた折柄、思切って新世界の朝日座で見ることにした。それから無産者同盟本部を訪れたが誰一人居なかった。桑田で甲皮壱足注文して大阪本部へ立ちよると、紀伊田辺の同人がキュダンして三名ケンソクされてオーエンたのむの電報が三本も来たとの話。今日は暇だし僕が行って見ようかとは思ったが、誰もきめもしない、大阪府水平社本部員がたくさん居られるのにと思ったのでそれはよしにした。

これは、豊中水平社の運動を担った今西弥之助（1900～1931年）さんの1926年1月16日の日記の写しです。今西さんは身体は丈夫ではありませんでしたが、仕事をしながら、運動に駆けずり回っていました。この日の日記からも、当時のくらしぶりの一端や運動の状況が垣間見えます。こうした人があったからこそ、今があることを改めて思い知ります。私たちにとっては、今直面している問題（組織と運動の弱まり）が一大事ですが、今西さんたちがくぐってきた時代を思うと、そうでもないような気にもなります。部落解放運動に関わることは、いい目は期待できず、きびしさと困難、苦労がつきまとうということだと思います。しかし、それだからこそ、一つのことをやり遂げることの喜びは大きくなるのです。90年前に道をつけた人があり、その道に私たちは立っていますが、この先を切り拓いていかねばなりません。

部落差別事件・いん・とよなか

2004～2013年の10年間に確認されたのは58件（1994～2003年は76件）で、そのうち「問い合わせ」が31件（同じく21件）です。総数は減っていますが、問い合わせは逆に増えています。要するに「部落がどこか？」を知るために市役所等に問い合わせる人が後を絶たないということです。

なぜか？理由はいくつか考えられます。普通なら「身近な人に聞く」はずですが、聞くのが後ろめたくてはばかれるのかもしれません。また、昔ならそうした情報は行き渡っていましたが、今はそうではないし、そういうことは問題だとの意識もあって、聞いても教えてもらえないのかもしれません。もとより、一番無難なのは「自分で調べる」ことです。書物やインターネットを使えばある程度の情報は得られますが、正確さには欠けるし、限界はあるし、めんどうなのかもしれません。そうなると、市役所等の公的機関に問い合わせるのが確実で手っ取り早いということになります。問い合わせをする人は、何よりも「そこが部落かどうか」ピンポイントで知りたいのですから、やはり役所に聞くのが一番だと思っているのでしょう。

その人たちがその情報を手に入れたら、そこには引っ越さない、そこの物件は買わないということになります。部落やその近くには住みたくない、部落のある学校に子どもを通わせたくないと考えているからです。そこに住んだら、自分や家族が部落とみなされて差別をされる対象になるから、それを恐れ、避けたいのでしょう。10年、20年の流れを見ると、部落と部落外との垣根が低くなればなるほど、部落差別がわからなくなればなるほど、「どこが部落か？」という意識は強くなっていってるように思います。

だから、部落に注がれる人々のまなざしを貫いている「特別視」を変えない限り、こうした事件はなくならないと思います。そのために私たちはどうすべきか？コトあるごとに、機会あるごとに、部落差別とは何かを丁寧に訴え、誤解を解き、偏見を糺し、理解を深めていく、そうした作業を重ねていくことが必要でしょう。