暮れなずむ街が 車窓を飛んでいく
列車はひたすら 北へ北へ
琵琶湖の湖面が キラリと光を放つ
稲穂が頭を垂れ 広がる黄金色の世界
山を抜け 風を切り 鉄路を刻む
濃さを増す夕闇が 車窓を鏡に変える
闇が私を包み 私を飲み込む
まばらな駅のホーム 冷たく光る蛍光灯
灯りが落ち 列車は滑るように走る
灯りが戻り トンネルが口を広げる
駅に降り立てば 郷愁が蘇る
かつての喧騒はなく タクシーだけが並ぶ
まばらな街灯 寒々とした待合室
ローカル電車が 静かに入る
夜はしんしんと冷え 身体に滲み通る
最終バスが着き 街を後にする
闇はどんどん 深くなる
行き交うものは 夜の帳
聞こえるのは 無機質なエンジン音
窓越しの冷気が 忍び寄る
山はざわめきを止め 川は水音を消す
村は息を殺し 人は固唾を呑む
鳥はねぐらを暖め 獣は穴倉に篭る
虫の音だけが 空気を裂く
あるのは 彩のない闇の世界だけ
目印は 散髪屋のネオン
そこだけは 煌煌と輝く別世界
田舎町に不似合いな しゃれた店
その先に見える 店の屋号
ドアが開くと そこは異次元世界
見たような 顔が一つ
視線が合い 名を告げられる
40年ばかり前に タイムスリップ
面影をたどり 無理に重ねてみる
ああそうだ 声や仕草は昔のまま
酌み交わす酒 時間は瞬くまに過ぎる
話は尽きず 酔いが心地いい
人はなぜ 昔を懐かしむのか
過ぎ去った時間が 惜しいのか
帰らぬ青春が 恋しいのか
千鳥足で歩く 夜の道
暗い暗い どこまでも暗い
廃墟のように 物音一つしない世界
犬も啼かず クラクションも鳴らない
静まりかえる 沈黙の世界
友ありて 遠方より来たりぬ
歓待に 心を慰撫される
憂さや迷い 心労が跳び
心が はじける
持つべきもの 友なり
by sayamaziken
| 2008-09-30 00:19
| 2008年9月
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