タイトルからは、重くて暗いイメージを連想してしまうが、どこか秘密めいた匂いも漂い、一体、何があっただろうかと好奇心をそそる。「七藝」ということでもあり、余裕をかまして出かけたが、到着してびっくり!エレベーターから降りると、ロビーにすでに人があふれているではないか?平日(金曜日)の昼どきなのに、これはしたり!もらった整理券番号は56、そのあとも続々と来る。かくして満員での上映となった。 映画の紹介はチラシにある通りなので省くが、インタビューで構成された114分には、貴重な証言がびっしり詰まっている。10代半ばの少年たち1000人からなる少年兵部隊「護郷隊」を指揮したのは陸軍中野学校の青年将校だ。ポマードを撫でつけた長髪で、颯爽と現れ、少年たちは羨望のまなざしを注ぐ。彼らは本土決戦に備えて、密命を帯びて沖縄を含む日本各地に配置され、沖縄はその最先端に位置付けられた。ゲリラ部隊として訓練された「護郷隊」の死者は分かっているだけで162人にのぼるという。こんな少年たちがゲリラ兵として命をかけていたとは!
「戦争マラリア」の悲劇として知られる波照間島では、住民1590人のうち、1587人がマラリアに感染し、477人の命が失われた。送られてきた青年将校は、表向きは教員として住民の信用を得るための仕事をしながら、その裏側では任務遂行のための工作を行い、時期が来るや豹変し、マラリアが蔓延する西表島に住民を強制移住させた。
軍隊は住民を守らないと言われる。何を守るのかと言えば、国であり、国体だ。米軍に追い詰められ手山にこもった敗残部隊は、住民が捕虜になると情報が洩れることを恐れたり、通ずる者がありはしないかと、住民間に密告網をめぐらせ、猜疑心を起こさせ、スパイリストを作り処刑さえした。これらは「裏の戦争」といわれたが、それに手を染めたのは住民だった。
生き残った人たちの証言の一つひとつを掘り起こすまでの苦労は想像に難くない。顔見知りの者同士であるがゆえに、見聞きしたことを口にすることは憚れるからだ。それらを丁寧に聞き取り、観る者の前に提示していく。断定せず、おしつけがましなく、その姿勢が証言を一層際立たせている。
それらの証言をとおして見えてくるのは、戦争は日常と離れた別世界にあるものではなく、私たちの町や地域の中に、普段のくらしの中にあるということだ。そして、いったんそうした事態になれば、歯止めはきかなくなり、事態は底なし沼の如く深化していく。戦地に派遣されなくても、否応なしに全ての人が様々な形で取り込まれ、有無を言えずに戦争体制の駒になっていくということだ。
いたずらに緊張を煽り、ミサイル防衛だの島嶼防衛だのと声を張り上げ、防衛力を増強し、自衛隊配備を拡大するとともに、秘密保護法や戦争法などの制定、そして、憲法改悪が目論まれているが、これらにかつての「写し絵」を見るのは穿ちすぎではあるまい。だからこそ、今観るべき映画だと思う。 第七藝術劇場 8/29 | 8/30 | 8/31 | 9/1 | 9/2 | 9/3 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 月 | 10:00 | 10:00 | 10:00 | 10:00 | 10:00 | 10:00 |
by sayamaziken
| 2018-08-28 19:09
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