行政施策は、それを裏付ける立法事実に基づいて法的措置が講じられて実施されるものだ。同和対策事業特別措置法(1969年制定)に基づく施策も例外ではなく、部落問題の解決を図るために実施されてきたものだ。その法が2002年に失効し、それに伴い、事業も見直しが行われた。今般の奨学金問題で大阪市は、問題が派生しないように措置すべきところを怠り、訴訟沙汰にまで至った。
そもそも「給付制」であったものを、今になって返還を求めるところに無理がある。そうした事態を招いたのは一重に市の「不作為」にあることは明らかだ。議会での議決をせず、「内規」で済ませてきたのは市自身であり、市は当然、その責任を負うべきだ。それを受給者に転嫁するなどもってのほかだ。「不作為」の当事者たる市長や教育長などが自弁すべきだ。
しかし、大阪地裁は「経緯」を認めながら、市の責任を免罪し、返還を命ずる不当な判断を行った。
●「読売新聞」5月25日(朝刊)
●「読売新聞」5月27日(朝刊)