●毎日新聞(3月23日)より
2011年8月、夏だというのに冷たい雨が降っていた。仙台から乗った電車は小牛田で2時間ほど接続がなかった。駅頭も駅前も何もなかった。「しまむら」の看板が目に入り、とりあえず雨具を求めに行った。そして、たどりついた石巻。もちろん地理鑑もなく、北上川と海岸の方向だけを確認し、人気が途絶えた街を、雨の中をひたすら歩いた。見るもの、目にするもの・・・すべてが圧倒的に迫ってきた。
足を棒になりかけ、疲労がピークにさしかかるころ、山裾に焼け焦げたような建物が見えた。それが「「門脇小学校」で、偶然に行き着いた。外観だけを見ても、まだ生々しかった。
そして、二度目は2013年6月。同じ道をたどった。風景はずいぶん変わり、部分的に人々がくらしを取戻しつつあった。「門脇小学校」はシートで覆う工事が行われていた。しかし、津波に流された土地は、山裾から海岸まで、何もないままだった。