何とも惹きつけられるタイトルだ。これを読まずしてどうするんだと思わしめてしまう。物語の主人公は、「最期の料理請負人」を名乗る佐々木充。人生の最期に食べたい料理を提供することを生業にしている。
2014年4月、依頼人の一人であった華僑の大物の告別式で、目に留めた90近い爺さんがいた。これが伏線だ。2ヶ月後、非通知の依頼電話。翌日、北京へ向かう。
遡ること82年、宮内省大善寮に務めていた料理人・山形直太朗と妻の千鶴は、満州へ向かう機中にあった。
物語は、現在(佐々木)と82年前(直太朗)とを絡み合わせながら展開していく。その共通項は、「大日本帝国食菜全席」のレシピだ。佐々木は、告別式で見かけた爺さん(楊晴明)から、直太朗と一緒につくったそのレシピを探すように依頼を受ける(報酬は5000万円)。一方、直太朗は関東軍の三宅少将から「満漢全席」を超える「大日本帝国食菜全席」を作れとの命を受ける。
佐々木は、直太朗の人脈と縁戚を辿る。糸は切れかかりしながらも、つながっていく。直太朗は、レシピ作りに精を出すが、それを披露する機会はなかなか訪れない。佐々木は、直太朗が残したなぞの「ことわざ」に行き着き、ハルビンに向かう。直太朗は、三宅少佐から重大な機密を知らされ、絶望を深める。
佐々木は、謎を解くことができたのか?直太朗は、レシピを完成させたのか?物語は、佳境に入り、意外な事実が明らかにされ、さらに驚くべき結末を迎える。