100席余の傍聴席は抽選となったが、運よく当たり、久しぶりの裁判傍聴となった。2階大法廷に入ると、左側一列が「在特会」関係、右側二列が「反ヘイト側」という仕切りだ。間際になって「在特会」側の代理人が着席・スタンバイし、10時56分、裁判官が入廷。「起立!」の号令がかかると思って身構えていたが、声はかからず、裁判官が一礼して座る。冒頭2分間のカメラ撮影が行われ、すぐに判決となった。
「主文、本件各請求をいずれも棄却する。訴訟費用は控訴人らの負担とする」「判決理由は省略する」と言い、裁判官は席を立った。「やった!よし!」と「反ヘイト側」、「在特会側」からは「日本の司法も終わったな。朝鮮人におもねって、恥を知れ、恥を!」と甲高い声が響き、法廷内は一時騒然となった。
その後、弁護士会館で報告集会が行われた。弁護士の解説、支援者や各地で闘う人たちの連帯のアピール、原告および朝鮮学校教員のコメント、最後に、朝鮮学校のオモニたちが登場し、子どもの作文を読み上げ、自身の思いを語る。
心が洗われるというか、人間の強さと優しさがにじみ出るようなとてもいい雰囲気だった。憤激、恐怖、苦悩、葛藤など測りしれないほどのものを抱え込みながら、眦を決して立ちあがった人たちに心より敬意を表したい。希望は闘いの中で、人間を信頼する中で生まれることを確信した。
●読売新聞(7月8日夕刊)
●東京新聞(014年7月8日 14時06分)より
ヘイトスピーチ 二審も「差別」 在特会、賠償と街宣禁止
ヘイトスピーチ」(憎悪表現)と呼ばれる人種差別的な街宣活動で授業を妨害されたとして、朝鮮学校を運営する京都朝鮮学園が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などに損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は八日、約千二百万円の賠償と学校周辺での街宣禁止を命じた一審京都地裁判決を支持し、在特会側の控訴を棄却した。
高裁の森宏司裁判長は、「朝鮮学園には、在日朝鮮人の民族教育を行う利益がある」と認定。在特会の活動について「人種差別に当たり、法の保護に値しない」と述べた。原告側によると、マイノリティー(少数派)が民族の言葉で教育を受ける民族教育の重要性について積極的に評価した初の判決という。一審は言及していなかった。
森裁判長は「在日朝鮮人を嫌悪、蔑視する発言は、差別意識を世間に訴える意図で、公益目的はない。民族教育事業の運営に重大な支障をきたし、社会的評価を低下させた」と指摘。映像をインターネット上に公開したことに触れ「今後も被害が拡散、再生産される可能性がある」とした。
判決によると、在特会のメンバーら八人は二〇〇九~一〇年、当時京都市南区にあった朝鮮学校近くで三度にわたり、拡声器を用い、大音量で「朝鮮人を保健所で処分しろ」「スパイの子ども」などと連呼し、その様子を撮影した動画をネットで公開した。
一審判決は、日本も加盟する人種差別撤廃条約を根拠に「差別に当たる。平穏な授業を困難にし、学校の名誉を損なった」と判断。在特会の街宣を人種差別とした初めての判決だった。
控訴審で在特会側は「国籍による区別を主張するもので集会、表現の自由だ」と主張し、賠償額も高すぎると訴えた。学園側は「街宣の悪質さや被害に基づく妥当な額だ」と一審判断を維持するよう求めていた。
在特会は在日コリアンの特別永住資格などを「特権」とみなし排斥を掲げる団体で、ホームページによると会員は約一万四千五百人。
街宣では、四人が威力業務妨害罪などで有罪が確定した。
<ヘイトスピーチ> 人種、民族、宗教上の少数者に対し敵対意識を持ち、憎しみをあおる差別的な表現。「憎悪表現」「差別扇動」などと訳される。2009年ごろから、在日コリアンが多く住む東京・新大久保や大阪・鶴橋で、保守をうたう団体が「殺せ」「たたき出せ」などと叫びながらデモを繰り返した。「カウンター」と呼ばれる反差別団体との乱闘事件も起きている。人権差別撤廃条約は各国にヘイトスピーチの法規制を求めているが、日本にはない。