もうすぐ終わる「フェルメール展」と、始まったばかりの「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」が重なった京都市美術館の前には長い行列ができていた。古都の秋は、芸術の秋でもあるようだ。お目当てが行列の方であれば退散したところだが、幸いにもそうではなく、すっと入ることができた。しかし、中はやはり人ごみで、ノロノロとしか進まない。仕方なく、めぼしいものだけさっと流し見して引き上げた。それにしてもすごい人だ。
この顔「彼らは言う、そしで僕もまたそう信じていっこうにかまわないのだが、自分自身を知るのは難しいことだ。だが自分自身を描くこともまた容易ではない。さっきも言ったが、僕は目下、2枚の自画像に同時に取り組んでいる。というのもモデルがほかにいないからで、なぜかといえば、こうした作品はかつて描いた小さな人物画よりも多くの時間を要するのだ。2枚のカンヴァスのうちの1枚は、回復してベッドを離れたその日に手をつけた。だから僕はまるで幽霊のようにやせ細り、青ざめている。それは暗い青紫で塗られ、頭部は白っぼく、髪は黄色。それゆえこの絵には色のもたらす効果がある。だがそれから僕はもう1故に取りかかっている。明るい色の背景に七分身像を描いている」 ゴッホ(弟・テオへの手紙より)
余計なものが何もない顔、悟ったような顔、寂しくもあり、哀しくもあり、その視線の先には何があるのだろう?