「『政権交代』と言った政党が、自民党と組むことは政権交代の意味をなくす。政治が、自民党と、自民党の亜種で行われる構図になってしまう」。社民党の福島瑞穂党首は15日、民主党代表選で先行する野田佳彦財務相が自公両党との大連立構想を打ち出したことに、かつての連立パートナーとして苦言を呈した。
福島氏は「約2年前に政権交代が起きた。社民党も連立3党合意を作り、自民党政権ではない、政官癒着をやめて生活再建の政治を作ろうとスタートした」と強調。大連立構想について「歴史を巻き戻して政権交代をチャラにするような動きだ」と痛烈に批判した。
さらに「大連立、大増税、原発推進。こういうことを起こさないよう大きな声を出していかなければならない」と「野田路線」を牽制した。
(8月15日/asahi.com)
党内からも野党からも辞任要求をつきつけられた菅首相は、粘り腰を発揮し、浜岡原発の停止を要請したり、玄海原発の再稼働に待ったをかけたりと、「脱原発」への並々ならぬ執念をみせ、「再生エネルギー法案」の成立にこぎつけるところにまできた。いわゆる「退陣3条件」も満たされることになり、民主党内では次の代表(首相)選びが始まり、あろうことか「大連立」といった話も飛び出している。
民主党は衆議院で圧倒的多数にもかかわらず、この間、自民党や公明党の言い分を聞き入れて、政権公約の見直し・放棄をし、政権党としての誇りを投げ捨てるような情けない姿をさらしてきた。衆参のねじれがあるから、野党の協力なしには、物事を決めることはできないが、スジを通すことを忘れて、すり寄るだけなら、政権党の資格はない。
首相の脱原発発言を「個人の思いを言っただけ」と官房長官が否定し、これまでの原発推進政策を切り換える千載一遇のチャンスをみすみす逃すような体たらくには、あいた口がふさがらない。
それにしても、政権交代を訴えた総選挙からまだ2年だ。こんな事態を誰が想定したか?あるとすれば、私たちには見えないところで、あれやこれやの策略をめぐらして、党内抗争に火をつけ、マスコミによる民主党たたきを演出した勢力だろう。民主党が掲げた政策を骨抜きにし、小沢一郎を刑事被告人にし、脱原発に執念を燃やす菅首相の辞任も目前となるなど、彼らの目論見はまんまと成功しつつあるのではないか。
その意味でも、社民党の福島党首の批判は当たっている。
野田や馬淵、小沢(鋭)、鹿野など、誰が代表になっても、リーダーシップを発揮することも、自公と渡り合うこともできないだろう。ズルズルと後退につぐ後退をし、骨抜きにされるだけだろう。彼らからは、「政権交代の大義」が完膚無きまでにつぶされようとしていることに対する危機感が全く感じられない。民主党政権の存在意義と歴史的使命は、そこにこそあるはずなのに、それを語らない。自公政治からの訣別ではなく、復帰への露払いをしようとしているように思える。
今、求められているのは卓越した指導力と揺るぎない信念を持ち、力づくでもみんなをひきずっていくことのできる人物だろう。それのみが、有権者(国民)の信頼を回復し、「大義」を甦らせる道に通ずるのではないか。