●番組の概要
ニュースの記憶 見えてきた真相 追跡「狭山事件」狭山事件のあらすじを紹介。
犯人を取り逃がした警察をめぐって国会は紛糾。この狭山事件が起こる一ヶ月前、吉展ちゃん誘拐殺人事件で犯人を撮り逃すという同じ失態をおこしていた。その他一般人に当時の様子を語る。否認し続けた石川さんを何度も逮捕し続けた。また、兄が犯人ではないのかと警察から迫られ、自分がやったと自白した。兄はしっかりとしたアリバイがあったが、それが明らかになったのは死刑判決が出たあとのことで、無期懲役となった。31年間を獄中で過ごすこととなった。
元警察官は探した場所から被害者の遺品の可能性がある万年筆が見つかり驚いたと語った。しかしインクの色が異なることを訴えたが、インクを入れ替えたのではと裁判所が退けた。去年5月、事件から47年後の証拠開示された。逮捕当日の石川さんが書いた上申書をもとに筆跡診断によって脅迫文と違う人が書いた可能性が高いとなった。指紋検出実験を行なった結果、脅迫状から石川さんの指紋が出なければおかしいということになった。
6月19日、朝日テレビの「サンデー・フロントライン」で、久しぶりに「狭山事件」が取り上げられた。事件のあらましや謎、現状と課題などが25分ほどの短い時間でコンパクトにまとめられていた。事件にまつわる疑問点をわかりやすく取り上げて、観る者に投げかけて、お仕着せではなく、考えてもらうという丁寧な手法がとてもよかった。
この種の事件では、えてして力が入り、あれもこれもと盛りだくさんになったり、冤罪を訴えることに力点を置きがちになるが、意気込みを押えて、じわっとしみだすような作り方を意識しているように感じた。
若いキャスターの素朴とも思える話しぶりに、当時を知るジャーナリストの回想、事件当時の映像とその再現、鑑定人による実証、最後に、証拠開示をめぐるスタジオでの意見交換と続き、48年前の事件が問いかけるものが、あますところなく提示された。そして、もちろん、この事件の核心である差別問題にもきちんと焦点が当てられた。
さて、7月には裁判所と検察官と弁護団による7回目の「三者協議」がもたれる。替わったばかりの小川正持裁判長のもとでの初めての協議だが、番組でも触れていたように、弁護団は長年にわたって、証拠開示を求めてきたが、検察官はかたくなに拒否し、裁判所はこれを追認してきた。昨年5月、その一部が開示されたが、検察官の手元にはまだたくさんの未開示証拠がある。
もちろん、番組でも取り上げられた「万年筆」や「脅迫状」、「犯行現場」とされる雑木林のそばで農作業をしていた人の証言だけでも、石川一雄さんの無実は明らかだが、未開示証拠の中には、さらに確実にするものがあるはずだ。だからこそ、検察官は出したくないのだ。冤罪事件に共通する証拠隠しと証拠のでっちあげが明るみにでることをおそれているのに違いない。
検察官は未開示証拠を開示すべきだし、裁判所はさらなる証拠開示を勧告すべきだ。