毎日、どこかで事件や事故がおこり、いわゆる「5W1H」を中心にマスコミで報道される。人々が当然知るべきものもあれば、そうではないものもあるが、押しなべて、画一的な顕名・実名報道が当たり前になっている。だから、私たちもそうした報道の在り方を当たり前として受け止め、事件が起これば、関心は「5W1H」へと向かう。
だが、事件によってはそれを明らかにすることによって、2次被害や3次被害が起きたり、被害者が追い込まれる状況になることもある。いわゆる、「人権侵害」に関わる事件では、そうしたことに対する配慮は大前提でもある。しかしながら、時にはその原則がないがしろにされ、被害者が暴かれ、さらし者になる事態が出来することもある。それは往々にして、情報公開と個人情報保護とを天秤にかけた結果であることが多い。もちろん、その結果は前者を優先することになり、後者が犠牲になるケースが多い。
最近、私の身近で起きた二つの事件でもそのことは確認できる。一方の事件は言語道断で弁解の余地のないもので、「5W1H」を適用してもいいくらいの気持ちにもなるが、それがもう一方の事件にも及べば、その被害者が特定されることになることから、それだけは絶対に避けなければならない事案でもあった。しかし、行政の担当課は、そうしたリスクを承知しながら、被害者の特定につながる情報をマスコミに提供してしまった。
条例が規定する個人情報の保護や、人権侵害での被害者保護・支援など、人権行政の根幹を揺るがす事態でもある。こんなことをしていると、セクハラ・パワハラなどの被害を受けた人は、市の相談窓口を訪れなくなってしまう。なぜなら、相談者の身元情報が明らかにされるからだ。二重・三重の意味で、大きな問題だ。