1974 年、“キンシャサの奇跡”(モハメド・アリ対ジョージ・フォアマンとの一戦)の前夜、世界最大のブラックミュージックの祭典が行われた。その地「ザイール」は、1960年に旧ベルギー領から「コンゴ共和国」として独立し、「コンゴ動乱」後の64年に「コンゴ民主共和国」に、71年に「ザイール共和国」と改称し、97年にふたたび「コンゴ民主共和国」になり、現在に至っている。この「ザイール74」と題されたコンサートが、34年の歳月を経て、今、蘇り、「シネリーブル梅田」で公開されている。
“ソウルの帝王”ジェームス・ブラウン、“ブルースの神様”B.B.キング、“サルサの女王”セリア・クルースとファニア・オールスターズ、”南アフリカの闘士”ミリアム・マケバ、“フュージョン界のスーパーグループ”ザ・クルセイダーズらのみなぎる熱気とあふれるエネルギーと、世紀の一戦を控えたモハメド・アリの核心をついた、容赦のないコメントが、時代を穿ち、問題のありかを暴く。
黒人解放運動は、様々な困難を乗り越え、多大な犠牲を払い、1964年に人種・皮膚の色・宗教・出身国に基づくあらゆる種類の差別を禁止し、連邦政府に人種隔離撤廃を実施する権限を付与した「1964年公民権法」を獲得した。しかし、差別は解消されず、その後も運動は荊の道をたどり、今日に至っている。
スカイビルではちょうど「マイケルジャクソン展」が行われていたが、「黒人であること=当たり前の人間である」として尊厳と誇りを前面に打ち出した彼らが、マイケルをどのように見たろうかと考えずにはいられなかった。
エンドロールの後で、メイン・スターであるジェームス・ブラウンがこう言って、フィルムが切れるが、ここに、このコンサートの意味と、出演者・スタッフがこめたメッセージが凝縮されている。
最後にひと言言わせてくれ
この映画を見終わったら外へ出て
1つやってほしいことがある
通りを見渡してから
自分に向かって言うんだ
“俺はれっきとした人間だ!”