明治時代に“劇聖”と呼ばれた名優・九代目団十郎と五代目菊五郎の偉業をたたえる「団菊祭」は1936年以降、江戸歌舞伎の名物興行として東京の劇場で断続的に開催されてきたが、東京・歌舞伎座が建て替えのため、「団菊祭」が初めて大阪松竹座で28日まで開催されている。
昼の部
一、摂州合邦辻 (せっしゅうがっぽうがつじ)
合邦庵室の場
玉手御前 菊之助
俊徳丸 時 蔵
浅香姫 梅 枝
母おとく 東 蔵
合邦道心 三津五郎
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳 (かんじんちょう)
武蔵坊弁慶 團十郎
富樫左衛門 菊五郎
源義経 藤十郎
三、天衣紛上野初花
河内山 (こうちやま)
河内山宗俊 三津五郎
松江出雲守 錦之助
高木小左衛門 東 蔵
素養のない身には、「團菊祭」と言われても「はて?」とならざるを得ないが、百聞は一見にしかずの精神を発揮。團十郎に菊五郎、加えて人間国宝の藤十郎がそろった「勧進帳」は、テレビ等でもおなじみの演目であり、興味深く観た。
玉手御前の菊乃助は色気ムンムン、妖艶そのもの。弁慶・ 團十郎の立て板に水を流すような台詞回しは圧巻。三津五郎の河内山は自信と貫録。
長唄や三味線、鳴り物など、いずれも縁の遠いものだが、すべてがその場所を得て、それこそ寸分の狂いもなく収まり、ゆるりとしたテンポや独特の台詞回しとあいまって、独特の時空を創りだしていた。