狭山事件再審請求で高裁が検察に証拠開示勧告
産経ニュース(2009.12.16 19:33)
昭和38年に埼玉県狭山市で女子高校生が殺害された「狭山事件」で、強盗殺人などの罪で無期懲役が確定し無実を訴える石川一雄さん(70)の第3次再審請求審の三者協議が16日、東京高裁であった。門野博裁判長は検察側に対し、警察の捜査メモや犯行時間帯の目撃証拠などの開示を勧告した。狭山事件の再審請求で証拠開示が勧告されたのは初めて。
検察側が「存在しない」としている殺害現場の血液反応の検査報告書については、不存在についての合理的説明を求めた。石川さんの弁護団が明らかにした。
弁護団は殺害現場の血液反応の検査報告書や、犯行時間帯の目撃証拠などの開示を求めていた。勧告に法的拘束力はないが、弁護団によると、検察側は再審請求での勧告にはほとんど従い、開示しているという。
裁判をめぐっては、石川さんの捜査段階での犯行を認めた自白や被害者の家族に届いた脅迫状の筆跡鑑定などが有力な証拠となり有罪が確定したが、弁護団は信用性に疑問を呈した。今回、高裁が開示を求めた証拠は、石川さんの取り調べメモや、筆跡鑑定のために捜査段階で石川さんが書いた脅迫状と同内容の文書など。犯行時間帯に現場近くにいた男性が「石川さんや被害者を見ていない」と証言した調書も含まれる。
殺害現場の被害者の血液反応の検査報告書については検察側が一貫して「存在しない」としてきた。しかし高裁は「存在しないというのはおかしい」と検察側に合理的説明を求めた。
東京・霞が関の司法記者クラブで会見した弁護団は「高裁が石川さんの自白の信用性に疑問を抱いているということ。再審開始に近付いている」と述べた。東京高検の大野重国公判部長は「十分に検討し、適切に対応する」としている。