今年も始まったノーベル賞騒動。5日、文学賞を受賞したカズオ・イシグロさんは知らなかったし、読んだこともない。だから、何の感慨もない。が、今朝(7日)の読売新聞「編集手帳」子はその「喜び」についてこう書く。「過去の日本人受賞者と同様、この喜びに負の作用があるはずはない。自然で素朴な感情だ」。なんと天真爛漫なことか。こうした物言いにからめとられ、気分良く、ナショナリストになっていくのだろう。政府までもコメントしている。
あくる6日には平和賞が発表されたが、政府の対応は正反対になった。この問題こそ「日本人」がきちんと向き合うべきものだろう。二枚も三枚も舌を使って、ひたすら逃げ回る政府の姿は醜悪だ。
政府、平和賞にコメント出さず 外務省幹部「立場違う」
10/6(金) 21:18配信
日本政府は、核兵器禁止条約採択に貢献した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞の報を複雑な思いで受け止めている。核廃絶へ向けた意義を認める一方、核・ミサイルの脅威を高める北朝鮮に触れ「遠く離れた国と、現実の脅威と向き合っている我々とでは立場が違う」ととまどいを見せる外務省幹部も。首相官邸と同省は受賞決定を受けてのコメントを出さなかった。
核禁条約をめぐって、日本政府は「核兵器廃絶という目的は同じだが、アプローチが異なる」と不参加の立場をとってきた。同条約には核保有国が参加しておらず、非核保有国との間で溝を生じさせる原因になっているとの理由からだ。
安倍晋三首相は8月9日、原爆が投下された長崎市内で被爆者団体と面会後、記者団に核禁条約に参加しないことを問われ、「核兵器国と非核兵器国の隔たりを深め、核兵器のない世界の実現をかえって遠ざける結果となってはならない」と強調した。
「被爆者に向けた受賞」ICAN国際運営委員・川崎さん
2017年10月6日22時17分
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員で、国際NGO「ピースボート」共同代表の川崎哲(あきら)さんのコメントは、以下の通り。
ノーベル平和賞が核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与されたという報に接し、驚きと喜びを感じております。今、移動中の機内におり、受賞理由など詳細を読んでおりませんので、簡単なコメントのみさせていただきます。まず、この受賞は、核兵器の禁止と廃絶を願って、勇気をもって声をあげてきた全ての人たち、とりわけ、広島、長崎の原爆被爆者の皆様に向けられたものだと思います。そして、世界中で行われてきた核実験や、核兵器開発過程で被害を受けてきた人たちにも向けられてきたものだと思います。こうした核被害者の皆様のたゆまぬ努力と、私たち市民運動の協力、そして心ある諸政府の尽力により、本年7月、核兵器禁止条約が、国連で成立しました。
この平和賞は、全ての政府に、一刻も早く、核兵器禁止条約に署名・批准することを求めています。ひるがえって、我が日本には、大きな宿題が投げかけられました。唯一の戦争被爆国であり、世界に平和国家として歩むことを誓ったはずの日本が、今日、核兵器禁止条約への署名を拒み、平和憲法を変えてしまうことを議論しています。こうした問題について、私たち日本の市民は真剣に再考を迫られるでしょう。最後に、核兵器廃絶を訴えながら、核兵器のない世界を見ることなくこの世を去った全ての被爆者の皆様に心より哀悼の誠を捧げます。取り急ぎ短いコメント以上で失礼します。
2017年10月6日 日本時間19時
アイスランドでのヒバクシャ被爆証言に向かう飛行機内より