生誕300年とあってか、若冲人気が衰えない。京都秋の特別公開でもその作品がいくつか公開されている。出かけたのは若冲と伊藤家の菩提寺の宝蔵寺で、『竹に雄鶏図』『髑髏図』の水墨画を見ることができた。
が、なんとなくもの足りなさを感じた。やはり若冲と言えば、極彩色の動物や植物が強烈な印象に残っているからだ。
宝蔵寺を後にして向かったのは、京阪「淀」駅。京都競馬場があるところだ。土曜日だから、混雑しているかと思ったが、そうでもなかった。淀駅から10分足らず、小学校のそばに劇団「京芸」の稽古場はあった。
中は薄暗い。階段状に座席が設えられていて、開演時には50人ばかりでほぼ満席になった。
芝居は、読売新聞にあるように、若冲にまつわる謎解きがストーリとなっている。舞台装置も道具も簡素だが、推理小説にも似た展開が観客は「異聞」の世界に引き込まれ、その結末に想像を膨らませていく仕立てとなっていた。
●「読売新聞」(10月21日)より
300年前の世界が現代に蘇る、そんな舞台設定ができるのは京都ならではだろう。連綿と息づくもの、そこには秘められた歴史がある。そして、それは好奇心を掻き立て、かの時代に生きた巨人へと至る。想像力と創造力によって物語が紡ぎ出され、それは新しい伝説となっていく。