越後湯沢と言えば、雪にスキーに温泉に酒ということになろうか。賑わう駅構内に静かに佇むのは「駒子」だが、足を止め、見やる人はほとんどいない。
そう、ノーベル文学賞作家・川端康成の長編小説『雪国』の主人公だ。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」との有名なフレーズで始まる「雪国」の舞台は、上越国境の清水トンネルを抜けた湯沢温泉である。
街歩きの地図を見ると、近くにその碑があるようなので、探しにいくことにした。「駒子もち」の看板がある。
目印のケーキ屋さんの角を右折する。すると、何やら空気は一変し、うらぶれた風情が漂う。かつてはネオンが点いていただろう看板が、当時の面影をしのばせる。
しかし、それらしものは見当たらない。標識の一つもなく、道に迷い込んだ気分だ。
急カーブの坂になっている車道を降り、上越線の下をくぐる。と、前方にそれらしいものが・・・。ああ、あった!これだ。「主水(もんど)公園」とある。噴水が勢いよく水しぶきを上げている。
八海山かどうかわからないが、北越の山を背にして石碑は堂々と建っていた。
時代が変わったのか、人々の関心が変わったのか、一抹の寂しさを覚えた。