1月22日、「袴田巌 夢の間の世の中」の試写会が大阪で(ビジュアルアーツ専門学校)あった。すでに寄せられている感想のとおりのいい映画だった。
言葉を発しなくても、人を惹きつけ、圧倒的な存在感をみせる袴田巌さん。その「巨人」をあるがままに受け入れ、穏やかに見守る姉の秀子さん。ところどころに挟まれている袴田さんの獄中日記は、死刑囚であることの意味を問いかけ、映画に緊張感をもたらし、バックに流れる音楽は絶妙のハーモニーを奏でている。そして、カメラはどこまでも静かに、二人の日々のくらしを丹念に追う。
自分の世界の外の出来事に動じることなく、その世界にまさに淡々として生きている袴田さん。時に見せる感情の一コマにホッとさせられると同時に、奪われてきたものの大きさと深さを改めて知る思いがする。
いわゆる「権力」を持つ者は、罪なき者を犯罪者にし、死刑を宣告して抹殺することもできる。それが冤罪であるが、一旦確定した判決を覆すことの困難性は幾多の事件が示している。幸いにして戻ってくることができた袴田さんも、まだ「仮の世間」にあり、「死刑囚」の軛からは解放されてはいない。それどころか、元の世界に引き戻そうとする権力側の悪巧みが続いている。
その意味では、裁判官や検察官にこそ観てもらいたい映画だ。