あの「靖国問題」(ちくま新書)の著者でもある東大の高橋哲哉さんの講演会ががエル大阪であるというので、これは聞き逃す手はないと思って出かけた。おそらく満員になるであろうと、少し早めに行ったが、案の定会場は立ち見がでるほどだった(150人ぐらいは入っていただろう)。
高橋さんのネームバリューはもちろんだが、この日の集会タイトル「憲法を変えて戦争にいくのか!」にあるように、先の総選挙での自民党大勝をうけて、憲法改悪がいよいよ現実のものとなりつつあることへの危機意識の現れでもあったと思う。高橋さんは「靖国と憲法を語る」とのテーマで1時間半ほど話した。以下にメモしたものをランダムに羅列する。
・改憲派は、9条改正を最大の狙いにおいているが、自衛隊を自衛軍にするだけではダメで、これを支える国民意識・精神をつくりだすことも同時に考えている
・その不可欠の一環として教育基本法の改悪がもくろまれている
・04年6月に自民党のプロジェクトチームが論点整理をしてから、政教分離原則の改定案は一貫している
・これに対して、平和主義を守り、これまでの運動の「限界を超えたとりくみをしていくことが必要
・1945年に終わったもの・終わらなかったものは何か?それは「帝国の体制」
・1891年の内村鑑三→教育勅語に対するおじぎで頭の下げ方が足りないとたたかれ、職を追われた事件=天皇制国家と個人がぶつかった初めての事例
・1911年「大逆事件」による社会主義者、無政府主義者、宗教者弾圧
・今、「君が代」の声量がチェックされている
・思想、良心、信教の自由や政教分離原則が侵される事態
・靖国問題が意識されたのは、国家簿時法案が提出されて以降で、それまでは天皇も首相も何度も参拝していた
・法案がつぶされて以降、首相の公式参拝が第2の山となり、中曽根以降の問題が今に至っている
・靖国問題の核心は、「合祀」が思想。良心、信教の自由の侵害であることにある
・合祀のとりさげに対して、「合祀は天皇の意思である」として頑として受け入れない靖国神社
・反対派も賛成派も含め、遺族の意思、感情は全く無視されている(誰を合祀するか?戦死者の認定をしたのは厚生省)
・政教分離原則は、主権在民原則と関わっている。これをあいまいにすることは、国家神道との癒着につながる
・帝国の体制は敗戦によって破壊されたが、これまで一度たりとも民の力で変えたことがない
・改憲の危機が現実のものとなっているが、それこそ“ゼロ”から始める覚悟が必要かもしれない
憲法と教育基本法、これは「体と心」「肉体と精神」に言い換えることができるとの指摘もあったように、まさにコインの裏と表だ。9条改正に民意はまだ「否」が過半巣を越えてるとはいえ、流れは明らかに改憲に傾きつつある。これに対してわたしたち「護憲派」はどうすべきか?対抗策はあるのか?といった質疑もかわされたが、もちろん決め手などあるはずはない。一人一人が事態を見つめ、できることをやりきること、そして、つながること、抵抗闘争を持続すること、しなやかに、したたかに、と言うしかないと思う。