東京高裁第4刑事部(小川正持裁判長)の再審開始と釈放決定に対して、東京高検は異議申し立てを行うともに、職権での釈放手続の停止を求めた。これに対して第5刑事部は、「職権を発動しない」と勾留を認めなかった。結果、ゴビンダさんは、入国管理局横浜支局に移送された。報道によると、ここで途切れていた強制退去の手続が行われ、国外退去処分になるようだ。問題は、この手続がいつ終わるのかだ。東京高検の異議申し立ては、刑の執行停止も含んでいるから、万が一これが認められれば、ゴビンダさんはまた収監されてしまうことになる。もちろん、第5刑事部はそんな判断はしないとは思うが、どちらも国家権力であり、楽観や油断はできない。
第4刑事部は、ゴビンダさんの無実を確信したからこそ、こうした決定をしたと思われる。それほどに、確定判決は杜撰だったということでもある。それをした高木俊夫裁判長こそ、ゴビンダさんの15年を奪った張本人だが、誤判の導火線となったのは、「ゴビンダさん=ネパール人」に対する予断と偏見(差別意識)ではなかろうか。そもそも一審で無罪となった人を、勾留し続けるなど、あってはならないことで、もし、それが日本人や欧米人であれば、そうはならなかったはずだ。そして、その決定をした高木裁判長が、控訴審を担当したのだから、結論は最初から決まっているも同然だった。かくして、真相解明は棚上げされ、有罪を導くための証拠だけが評価された。典型的な冤罪と言える。