「土地差別調査事件」の糾弾会があいついで行われているが、10日にはデベロッパーから調査依頼をうけ、それを調査会社に委託していた広告会社4社に対して行われた。総じて言えば、事実確認が不十分なために、やりとりが散漫になり、尻切れトンボに終わった。
三者の中間に位置する広告会社は、デベロッパーからの依頼をそのまま、調査会社に丸投げし、上がってきた報告書の表紙を自社のものに替えて、デベロッパーに渡していたが、次のように述べている。
●クライアントであるデベロッパーからの差別調査の依頼を受けたことはなく、土地調査会社に差別調査を依頼したことはない。
●「地域下位地域」が同和地区の所在地を示唆する言葉であると認識していた。
●土地調査会社に「地域下位地域」など、差別報告を指摘することは一切なく、自社で修正・削除・加筆し、デベロパーに提出していた。
●今回、明るみに出た「差別報告書」は、修正等のチェック漏れとの認識にあった。
差別に関わる調査依頼もなければ、してもいないと、調査会社が勝手にやったことだといわんばかりだ。そして、自らが差別調査の一翼を担ったという意識はなく、調査会社から差別報告書を、それだと気づかずに受け取り、チェックができきれずに、デベロッパーに渡していたことが問題であり、その責任だけを認めてすり抜けようとする態度がありありだ。
しかし、仕事をとるために、デベロッパーにはサービスでやっていると言うように、彼らはデベロッパーの意向をくみ取り、それに敏感だ。だから、差別調査も、そうした状況下で当たり前になっており、依頼にはそれが含まれることは言わずもがなのことだ。
事件の構図は、三者の密接なつながりのもとでの役割分担がなされ、被差別部落の所在地情報などのマイナス情報に関わる調査が慣行として確立されていることを示している。差別調査の連鎖は、どれを欠いても成立せず、その意味では、広告会社はその連鎖の一つとして、忠実に役割を果たすことがその存在理由だと言ってもいい。そして、それを律儀にやってのけてきたのだ。だから、事ここに至って、責任転嫁や責任逃れのための抗弁は見苦しい。
それにしても、そうしたありようを許してしまうのは、事前の詰めの甘さにあることは確かだろう。「真理は細部に宿る」と言うが、本質を暴き出すためには、事件の細部を現場で徹底的に明らかにし、言い逃れの余地を封ずることが必要だ。短兵急ではなく、用意周到であるべきだ。