再審事件で証拠開示勧告
一名古屋高裁、東京高裁などで多数の再審事件の審理を担当されました。再審事件の審理で、何か感じられたことがありますか?
再審事件に共通の問題として感じたのは、検察側の証拠開示が不十分であるということでした。今の公判前整理手続きに付されている事件であれば、当然開示されるはずの証拠が弁護側には全然開示されていません。結論はどうあれ、そのような証拠のままではフェアな手続きとはいえないと思います。
新聞で報道されましたが、束京高裁で担当した狭山事件の再審では、裁判所の考えを明確にしておこうと思い、訴訟指揮の一環として証拠開示の勧告にまで踏み込みました。
直接の根拠条文はありませんが、再審事件においても、公判前整理手続き中に盛り込まれた類型証拠開示や主張関連証拠開示の制度に準じて、検察側証拠の開示がなされるべき場合があると考えます。
これは、「(社)自由人権協会」発行の「JCLU」(人権新聞)374号(2010年4月号)に掲載された「『裁判員時代の刑事裁判を探る』裁判を振り返る連載を終えて」と題した元東京高裁総括判事である門野博さんへのインタビューの一節だ。これだけで即断はできないが、狭山事件で証拠開示勧告をするに至った事情の一端が垣間見える。