昼の街は焼けるような太陽が照りつけ、最高気温は34度にも達した。
その陽が沈み、熱を抱いた街は夜の帳に包まれる。
ゆったりと流れる時間を持て余し、夜の街を歩く。
路傍ではコオロギが、時を得たかのごとくに鳴いている。
頭上を見ると、丸く輝く月が私を見下ろしている。
真東の空にくっきりと、いまにも零れ落ちそうに浮かんでいる。
手を伸ばせば届くかに見えるが、歩いても歩いても距離は縮まらない。
静かに微笑むお前は、私の心を読んでいる。
艶やかに輝くお前は、私の心を慰撫する。
私の心は重く、哀しいのに、煌煌と輝き、笑っている。